カレンシルバーが生まれる村を訪ねて
チェンマイから車でおよそ3時間。
道をゆっくり進むにつれ、風景は街から緑へと移ろい、やがて辿り着いたのは、カレン族の人々が暮らす村。
アスファルトと土の道が交じりあう村のなか、
木造の高床式の家々が並び、家のまわりには果樹と畑が広がる風景。
どこからか鳥のさえずりが聞こえ、
道端ではのんびり過ごす犬や猫。
時々バケツをひっくり返したようなスコールが
一気に空から降りてきて
土の香りがふわっと立ちのぼる。
そんな日常のすぐそばでカレンシルバーの
アクセサリーは作られています。
カレン族は、タイ北部や山間部に暮らす少数民族のひとつ。
農耕や織物などを営みながら、豊かな自然とともにある暮らしを大切に受け継いできました。
そんなカレン族の村のなかで、受け継がれてきたものづくりのひとつが、銀細工の文化。
高純度の柔らかい銀をアクセサリーやビーズにして身につける習慣が長く根づいてきました。
それは装飾であると同時に、祈りでもあり、
人生の節目やお守りとして、さまざまな意味をもってきたもの。
この村では、ものづくりは“暮らしの営み”の中にあります。
家のすぐそばの軒先で、大人も若い人も、それぞれの手を動かしていました。
工房といっても無機質な空間ではなく
木の机と道具が並ぶその場所には
風が通り抜け、光が差し込み、
誰かの笑い声がまざるようなあたたかな場所。
ときには、ハンモックに揺られながら
おばあちゃんが赤子をやさしくあやしていたり。
日常のすぐそばで、ものづくりが根を下ろしている様子が伝わってきます。
そっと吹き抜ける風が、軒先のチャームを揺らし、
手仕事の音とともに心地よい音が作業場に響いていました。
音に包まれたその空間には、ゆっくりと穏やかな時が流れます。
銀を叩き、磨きながら丁寧に形を整えていく。
細かく刻んで模様を彫り、
火を使って溶接する繊細な作業まで、ひとつひとつの工程が今も変わらず手作業で丁寧に行われています。
そして、思わず息をのむ、ビーズ一粒一粒をカットし、穴を開ける細やかさ。
たった数ミリの小さなビーズに穴を開ける手仕事は、想像以上に繊細でした。
目に見えないほどの小さな作業が積み重なって、
はじめてひとつのパーツが生まれます。
最近では、伝統を受け継ぎながら、少しずつ新しいかたちを試みている若い作り手の方たちの姿も。
変わらないものと、変わっていくもの。
どちらもこの村では、自然なこととして並んでいます。
カレンシルバーの銀の純度は、
スターリングシルバー(92.5%)よりもさらに高く、
やわらかな光をまとったようなマットで深みのある質感が特徴です。
自然や暮らしをモチーフにした刻印模様が、
小さな面に一つずつ彫り込まれ、
作り手の手しごとの跡が、そのまま残っています。
カレン族のものづくりを知ってから
カレンシルバーを手にとるとき、
作られた場所の風や光、誰かのまなざしまで、
そっと一緒にまとえる気がしています。
ひとつひとつ、かたちも模様も、
すこしずつ違う“ゆらぎ”が魅力。
そんなカレンシルバーのアクセサリーを
今回、刻印のもの、ビーズのものと順を追ってお届けします。
次回は、ビーズができるまでの工程もご紹介を予定していますので、ぜひ併せてご覧ください。